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安曇野写真記 第3話 響くシャッター。リズムはカノン。

こんにちは。

まだまだ暑いですが今日は、写真記に。

前回の更新と実に2週間と空いてしまったわけですが…頑張ります。

だから皆さんも頑張って前回、前々回の記事を読み返してから読んでいただけることをお勧めします(;´∀`)

では…、ちょこっとあらすじを書いて本編へ行きましょう。










[あらすじ]…高校2年の12月。この季節に独り身は肌寒い。当時思いを寄せていた女の子に青年のアタックが今宵始まる。
さやかさんがヴァイオリンで最高のコンサートを披露し、演奏に感動した青年は前々から決めていた「クリスマスにぴったりなイルミネーションの写真をプレゼントしよう」と改めて決意する。
舞台は安曇野。軽く氷点下を超えた寒空の下、青年は最高の一枚を撮ることが出来るのか。






着いた…。

“国営アルプスあづみの公園”

人里はなれたところに妙に明るく、広い敷地が。

思わず税金の無駄遣い…なんて言いそうになったがここは私にとって、かけがえのない場所になるかもしれないところである。

言葉には気を付けなくては…。


しかし…寒い…。

自転車で全力で漕いできたものの、すぐに体の熱は冷め、寒さが襲う。

そもそも、ここへ夜中に自転車で来るという行為自体、間違っているのである。警備員のおじさんに、嫌な顔をされたのを覚えている。


が。

建物の中に入ってしまえばこちらのもの。

さすが…国営。

使ってるとこに使ってるじゃないか、税金を。

いいぞ、暖房がんがん焚きなさい。


そして、いよいよ入園。

なぜかゲートが。え…入園料取るんかい…。

なんでニコニコしながら左手出してるんだこの爺さんは…。

まぁ…数百円で恋が実るなら安すぎる。いいだろう、払ってやろう。


そんなことを考えながら、清田と入園。

しかし、珍しい客だと思われていただろう。

クリスマスシーズンに年頃の男二人でイルミネーションを見に来るんだから。あっちの人たちかしら…なんて思われていそうである。

けれども、そんな下らない不安はすぐに吹き飛んだ。

なぜなら…入園して少し歩いたところで、目の前に広がった光の芸術に私は圧倒されていたからである。

安曇野公園2
                                      (PHOTO BY 千紀)
どうだろう…

もう言葉では言い表せないような光景が広がっていた。

しかも男は普段、こういったところには来ない。女の子と一緒じゃなきゃ。


学生の頃から長野の綺麗な自然に囲まれて育ってきたが、人間が作ったこの光の造形には正直、圧巻された。

“光の海”があったのである。


しかし…、やはり隣にいた男は冷静だった。


清田「千紀くん!ほら、写真撮らないと!時間ないからね。」


千紀「…」


清田「見とれてないで、早く撮りなって!!」


千紀「この良さが分からないのか…いいか、写真はカメラで撮るもんじゃないんだぞ」


清田「下らない御託はいいから。写真はカメラじゃないと撮れないから。」


千紀「このリアリストめ…」


清田「もっと現実を見たほうがいいよ。終電は待ってくれないから。」


千紀「…」



そう、終電がある。

普段電車に乗らない私にだって、終電の意味くらい解る。

これに乗れないと帰れないってやつだ。だから、終電の電車が来る前には駅に着いてなければならない。

ここまで大体、30分かかってやって来れた。

逆算すると、9時半が終電だったから、9時前にはここを出ないといけない。

いや、違う…。

私は自転車に乗ってここまで来たが…その自転車は、清田の妹さんの自転車だった…。

だからこの自転車は清田の家に返して、そこから…歩いて駅に行かねばならない…。

たしか駅から清田の家までは…これも30分近くかかったはず…

単純に計算しても8時半くらいにはこの公園から出なければマズイ。


しかし…ふと頭の中に妙案が浮かぶ。

“今日は金曜日…明日は学校もないし…終電に乗り遅れたら…コイツの家に泊まればいいんじゃないか…”

ふふふ…

なんでこんな簡単なことに気がつかなかったんだろう…'`,、('∀`) '`,、

余裕を持って公園内を回れる。







国営アルプスあづみの公園。

国営アルプスあづみの公園は長野県にある国営公園。

「自然と文化に抱かれた 豊かな自由時間活動の実現」をテーマにして、

2004年7月24日に全国で16番目、甲信越地方では国営越後丘陵公園に次ぐ2番目の国営公園として、

長野県安曇野市(堀金・穂高)に安曇野地区部分が暫定的にオープンした。


また2009年には、大町・松川地区部分(大町市、北安曇郡松川村)が開園。


さらに将来的にはどちらの公園も規模を3倍つまり、敷地が3倍になるらしく…


しかし今はそんなことはどうでもいいのである。

もう後にも先にもここに来るのは、これが最後。


1枚、いや2,3枚ほどいいカットが撮れればいいのである。

いや、撮るんだが…。


安曇野公園3
                                 (PHOTO BY 千紀)


青を基調とした、艶やかな光が特別な夜を演出する。

また公園内には、音楽が流れており…山下達郎の「クリスマスイブ」や、マライア・キャリーの「恋人たちのクリスマス」…

クリスマスの名曲が流れる。

そしてそんな曲に合わせて、イルミネーションも点滅をする。

撮る側としてもこれはテンションが上がって、撮っていて楽しい。


しかし、私は夜景の撮影は初めてに近かったので露出、つまりカメラのシャッタースピードや、絞り(光の光量調節)、ISO(感度)の合わせに手間取る。

専門的な話になるのだが、いまのコンパクトカメラならオートで感度やらいろいろ合わせてくれるみたいだが、一眼レフカメラは全て自分で設定しないといけない。

一応はすべてカメラ任せという設定もあるのだが、正直「…うん。」みたいな出来で、最悪の場合はカメラの自動プログラムでも認識できないような場所はあるのでいい写りは期待でない。


この日は幸いなことに曇り空ではなくて、日中は晴れていたせいか夜空に星が見えていたけれども、やはり周りが暗いことには違いなくて…

とりあえず、画質を諦めて光量を得るために感度を上げる選択肢を取った。

その分絞り値を高くしてやればよかったのだが、生憎シャッタースピードが遅すぎるとこの公園のイルミネーションはちらほらと移動するように点滅しているので…

どうやってもスローシャッターで撮るとぼやっとした写真になってしまう。

つまり、三脚を持ってきてもスローシャッターで押さえることはないのでただのお荷物になってしまった。

それでも作画をするときなんかは三脚がなかなか活躍してくれたので持ってきた価値はあったような…。


カメラ機材


当時、我が写真部でデジタルカメラを所有していたのは私だけで。

いや、語弊があるのだが“機材的に揃っている”のは私だけで…親にも顧問にも、「学生が持っていていいもんじゃない」なんて嫌味を言われていたほど。

校内では、文化祭や新人勧誘などの作品展示でも私の写真を見に来てくれるだけの方が居たり、そこそこ評判が良かった。

だからこそ、こんなところで失敗するわけにはいかないし、ましてや「はじめての夜景の撮影で…全然撮れなかったよ。」なんて恥ずかしすぎるのだ。


清田はバリバリのフィルム派であり、イルミネーション撮影にもフィルムカメラで挑んでいた。

しかし、やはりフィルムの感度にも限界があり、適性露出が得られずに苦戦していた。


私がカメラを始めた頃にはデジタルカメラが出回り始めたころでった。

高校の頃には既にデジタルカメラの勢いが止まらなく、フィルムカメラがもう絶滅しかかっており…

いまもそれは変わっていないのだが…

だから、当時から部長の清田とは

「俺たちがフィルムで撮影して、現像まで自分たちでやるって本当に最後の世代かもしれない」という話をしていた。

そんなこともあり、私も同世代の中では人一倍フィルムカメラには思い入れがあったのだが…

今日は背に腹は代えられないではないが…

フィルムカメラで失敗したら本当に終わりだが、デジタルカメラならそれがない。

それがないとは言い切れないが、その失敗の確率はグンと減るのは確かなこと。


なにより、撮影後の画像が確認できるのはとても便利で、次にどう修正すればいいかだいたい読める。

だから、カメラを買う際に大事にしたいのがモニター。結構見落としがちだが、ここのモニターの解像度なんかにこだわると、いざパソコンにデータを取り入れるときに

撮影したままの、つまりモニターで見たままの画像がパソコンのまえで見れることになる。

逆は言うまでもなく、モニターの画質が悪いので自分の撮った写真の白飛びなんかが上手く確認できずに…ということはよくある。


と、そんなカメラの御託はいらない。








思ったより公園は広くなかなか撮りごたえがある。

また音楽に合わせて、色や点滅の間隔が変わるイルミネーションには、撮っている方にも飽きはなくて、同じ景色は二度と見れないような、"絶対に押さえてやる"という気持ちに駆られる。


しかし。

気持ちは撮影に向いているのだが、体が思い通りに動かない。

歩いていれば幾分は楽なのかもしれない。

なぜなら、繰り返すが、"氷点下"である。かなり寒い。細かいダイヤルの設定等あるカメラマンにとって手袋なんて流暢なもの付けてる余裕はない。

また、1つの撮影場所を決めるとそこに何分か当然ながら止まって撮影するので、ちょっとの風が痛い。

もう手はかじかんで…だんだん感覚がなくなっていくのが解る。

歩いてないと、つま先が凍ったように冷たい。

華やかな場所であっても、冷たい場所である。


そして、ここでまたもやつが…


清田「千紀くん!ちょっと急いだほうがいいかもよ!!もう8時になっちゃうよ。」


千紀「あぁ、けどアレだな。腹減らないの?どう、あそこにレストランあるけど…?」


清田「そんな時間あるの?」


千紀「いや、時間はないかもしれないが…手が冷たすぎる。ラーメンの一杯でもさ食べれば温まる気がするんだが。」


清田「うん…。でも、ほんとに帰る時間考えたらあと30分くらいしかここにいられないからね?」


千紀「でもさ、この寒さに震えた状態で撮ってても、いい画は撮れない気がする。間違いなく。」


清田「それは…」


千紀「ok ok  5分で食べよう。」


というわけで、さすが国営!と言わんばかりの大きな食堂が園内に併設されてあるのを利用させて頂き、醤油ラーメンを頼む。

しかし、どういうわけか清田は頼まない。


千紀「おい、頼まないのかよ?」


清田「あ、うん。お金ないから。」


千紀「ちょ…。なんか俺だけ食うのって悪い気がするよ。」


清田「いいから。早く食べなよ。伸びるといいことないよ。時間も麺も。」


千紀「…あぁ。」


清田の寒さに拍車をかけるジョークを軽く流し、ラーメンを食べる。

ただこの時、考えていたのは、寒さのことでもなく、いい写真を撮るということでもなく、さやかさんのことでもなく。

どうして、コイツ、清田は付いて来たのだろうかということ。

寒い中、道案内だけでも良かったはずなのに…。

普段フィルムを買うのでいっぱいいっぱいのはずなのに、入園料まで払って。

飯まで我慢して。

さらに言わせてもらうなら、フィルムカメラでしかも感度400ほどのフィルムでは夜景撮影は条件が揃ってないとほとんど不可能である。

しかも清田が使っていたフィルムカメラは35mm、レンズはたいして明るくもないレンズ。

もう撮れるわけないのである。

それなのに、なぜ来たのか。


清田の意地なのか…それともただ単に友達思いなのか、行ってみたかっただけなのか、こればっかりは聞いてみないと分からない。

ただ私にはそんなこと聞くのは小っ恥ずかしかった。


だから、私の中で勝手に結論づけた。


安曇野公園4
                           (PHOTP BY 千紀)


そんな清田への勝手な思いを胸に再び、寒い寒い園内に戻る。

けれど残された時間、私のすることは1つ。

清田の行為を無駄にすることなく、私は遂行しなければならない。



なにより、"撮る"

それも正確に、綺麗に。

そこに自分のアイディアを入れて上手く作画する。

一口に写真と言ってもシャッターを押すだけではない。

たしかに"写真"には、"音楽"や"演技"に比べると人に与える感動は少ないと思う。

けれど少しでも、「いいね、この写真」と、"綺麗"、"素敵"なんて思って貰えたのならこっちの勝ちである。


私の写真論であり、私が写真を撮る理由でもある。


だから、さやかさんにも見て貰いたかった。

彼女の演奏に比べると小さな感動しか与えられないかもしれないが、その感動が少しでも大きくなるような写真を撮ろうと思った。


清田にも感謝の意味も込めて撮ってやろうと思った。








残された時間は数十分。


青年はいろんな思いを胸にシャッターを切る。


それは最早、誰かのためではなく自分のためだったのかもしれない。


自分がこの場所にいるのは写真を撮るためであり、自分がここにいていいのは写真を撮るからだ。


"光る海"


さて、どんなふうに料理(作画)しよう。





                        第3章完

 



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 執筆意欲に関わるんです( ´∀`)σ




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[ 2011/08/03 15:00 ] 安曇野写真記 | TB(0) | CM(1)

安曇野写真記 第2話 向かう目的地。口笛はカノン。

こんにちは。

今日はお友達には好評だった『国営アルプスあづみの公園写真記』第2弾です。

なんか1話目はまったく写真記じゃないんですけどね…。淡い。うん、淡い。

さて、じゃあ早速ですが…

続きです。

また追記で会いましょう( ・`ω・´)

では、ごゆっくり…。















 国営アルプスあづみの公園のイルミネーションを知ったのはラジオだった。

地元放送局がやっている番組がちょうど、放課後にやっている。

私はよく放課後、部活もやらないでポケーっとしているときはイヤホンを耳に入れ、ラジオを聞いていることが多かった。

そこで、リポートされていたのがクリスマスに合わせたあづみの公園のイルミネーション。

12月の頭から既に何人ものお客さんがいらしている、なんてリポートしていたような気がするが、

そんなことはどうでもよかった。

クリスマスイルミネーション。

まさに時期的にもぴったりである。

さやかさんはクリスマスコンサートを。

私はクリスマスイルミネーションの写真を。



千紀「このあいだのコンサート感動したよ。あ、そうだ。そうだ。この写真さ。貰ってくれないかな。」


さやかさん「え?なにこれー?うわぁ、綺麗。」


当時こんなコトばっか考えていた気がする。

いや、日本の男子高校生なんてこんなもんだ。


だから、さやかさんが喜んでくれるような写真をプレゼントしようと当時は燃えていた。

プレゼント


そして、クリスマスコンサートを途中退室した私は、

同じく途中退室して、先に駅へ向かう清田を自転車で追いかける。








電車はそう何本も出ているわけではない。

田舎の弱点だが、こればっかりはしょうがない。

だから6時半の安曇野方面行き発の電車に乗らねばならない。


正直、松本に住む私にとって電車に乗るということ自体経験が少ない。

小学校も。中学校も。高校も松本だったし、乗る機会がないのだ。

だから、私は券売機を扱えない。

これは痛い。

というより、時刻表の読み方だって危ないもんであった。

当時「上り」と「下り」の意味が理解できなかった。


しかし。私には今夜助っ人がいるのだ。

写真バカでありながらも、私よりは世間一般の常識を知っていそうな写真部部長の清田がな。

彼は私にとっては幸運なことに、あづみの公園のある安曇野から高校に通っているのだ。

そして、あづみの公園がどこにあるかも知っている。

ついているどころの騒ぎではない。

もう神様が行けって言ってるのである。


あづみの公園にイルミネーションを撮りに行こうと決めたときは一人でなんとかバスにでも乗ってどうにかするつもりだったが、

清田に少し話してみると


清田「千紀くんがこの寒い冬に写真撮りたいなんて…どうかしたんじゃないの?」


千紀「いや、それはそのあるんだよ。いろいろ。」


清田「いいよ?あづみの公園でしょ。一緒に行こうよ。」


と、すんなりと案内役もしてくれる上に…

音楽部のクリスマスコンサートにも付いてきてくれたのである。

勿論、何故私がコンサートに顔を出すのかは私なりの筋の通し方として、話してあげた。

それを聞いて結構、ノリ気でいてくれたみたいなのでホッとしているのが正直な気持ちだった。








そして私が駅についていた頃には、清田は既に駅に着いており…


切符まで買っておいてくれるというなんか、これから男ふたりでイルミネーションを観に行くというシチュエーションを考えると複雑な気分。

それでも礼を言い、電車を待つ。

松本電鉄jr

そして電車が到着し、乗り込むと意外や意外。

夕方のこの時間というのはかなり混んでいる。

サラーリーマンも多いし、OLぽい人もいる。それより多いのが女子高生。

私は座れなかったのでつり革を掴んで立っていたのだが、こう女性と数センチの距離を保っているというのは、

なんかオアズケをもらった犬になった気分。

電車が揺れると、ぶつかったりするのである。しかもサンド状態。

もう当時の私にとっては、なんかの糸が切れましたよ。

自分より年上のOLに囲まれて、ふわふわされるのである。もう…








しかし、40分ほど乗ったところで目的の駅の「とよしな」へ着く。

各駅停車だったので、止まるたびに清田に「まだ大丈夫?」なんて聞いていた。

電車に乗った経験が浅い人は本当に、「乗り過ごさないかな」なんて心配しているのである。


そして、とよしな駅に着いてびっくりしたことが。

小さかった。私は松本駅みたいな駅が普通の駅だと思っていたが、まさかこんな駅が存在しようとは…。

豊科駅

さて、私は到着してそうそう清田から衝撃的なことを聞かされる。


清田「あ、千紀くん。平日はさ、観光バスお金とるみたいなんだ。」


千紀「え?そうなの。ラジオじゃ無料シャトルバスが出てるって聞いたんだけど@@」


清田「休日だけだろうね。だからさ」


千紀「うん?」


清田「うち来れば、妹の自転車貸すからさ。自転車でいこう。」


千紀「お、おう。」


と、バスに金かかると聞いて思わず反射的に、清田の家まで行き、そこから公園まで自転車で行くことにOKしたわけだが…


清田「あ、千紀くん。ちょっと待ってて。」


千紀「う、うん」


清田「自転車取ってくるから。」


千紀「…?(´・ω・`)」


理解するのに数秒かかったのだがこういうことだった。

清田は家から駅までは自転車で通い、電車に乗って松本に来ている。

だから自転車は駅の駐輪場に止めてあるからそれを取りに行ってくると言っているのだ。


待て。

つまりは、清田は自転車で駅まで来るような距離に住んでいるということになる。

誤算だ。これは誤算だ。


それでも一応確認。


千紀「なぁなぁ、お前の家って遠いのか?ここから。」


清田「そんなことないよ?5kmくらいじゃないかな。」


千紀「そうか。ここってなんでタクシーがないんだ?」


清田「田舎だから。」


千紀「そうか。シャトルバスはなんで来ないんだ?」


清田「平日だから、数時間に一本とかでしょ?ていうかあの公園って普通は車で行くとこだからね。」


千紀「そうか。次の松本行きは何時だ?」


清田「さ、走ろうよ。千紀くん^^」



…。終わった。5kmってなんだよ。

小学生のマラソン大会じゃないんだぞ。

だが私にもプライドがある。

小・中学校とサッカーで鍛えたこの足腰があるのだ。


清田「千紀くんって結構走れるんだねー。俺さ、中学まで陸上部だったけどなかなかだよ。」


勿論、応援のためにお世辞として言ってくれたと思う。とことん、世間を知っているなあと感じてしまう。

だが、そんな応援と私の足腰の筋肉は虚しく1km地点でバテる。


千紀「もう無理…ていうか、自転車代われよ。こっちは教科書のカバンも背負ってるし、カメラバックだって持って入ってるんだぞ。」


清田「うーん、そうだね。じゃあ、近道する?」


駄目だ聞いてねえ。

だが、近道があるならそっちを選ぶのが人間。


千紀「勿論、近道だ。で、5kmが何キロになるんだ?」


清田「2kmくらいかな。」


千紀「最初からそっち言えよ。あと1kmじゃねえか。」


清田がなにか言いかけていたが、近道を進むことにしたようだ。

そしてなぜか田圃の畦道へ。

当時、といっても今もそうだと思うが、安曇野の堀金村というところを走っているわけなんだが、ど田舎なのである。

どが3つほど付くくらい。

当然、街頭なんてない。星明かりが道を照らしているのである。

が、そんな星の光が煌々としているわけもなく松本よりもすごく綺麗に見えるよーっていうレベルで

別に視界がよくなるわけじゃない。

足元が見えない、砂利や石がごろごろ転がったような田んぼの畦道を走っているのである。

それも何キログラムもするカメラバックを持って。


清田「千紀くん頑張るねー。ほんと、どうしたの?」


千紀「言っただろ、さやかさんのためにな。あんな素晴らしい演奏だったんだ。俺もなにかお返しをしないとな!」


清田「はぁ…まぁやる気になってくれるならいいけど。」


千紀「そういえば、今日のアレなんていう曲なんだ?♪トゥ~トゥラトゥトゥトゥララ~♪みたいなの」


清田「あぁ、カノンだよ。カノン。」


千紀「いい曲だよなぁ。あぁいのに触発?されて、俺って芸術思考が高まるというか。」


清田「へぇ。単純なんだね。」







そして、足元が見えない道を進むこと数十分。

清田家に到着。

ここからは自転車が貸してもらえる。もうあとはスーイスイッていう具合に国営アルプスあづみの公園まで行けそうである。


千紀「なぁなぁ。ここから公園までどのくらいなんだ?」


清田「うーん。頑張りにもよるけど、行きは登りだから20分くらい。30分かな。」


千紀「結構距離あるな…まぁ、もう7時過ぎたし急ぐか。ていうか真っ暗(ー_ー)」


清田「だって、コンサートなんて出るんだもん。しょうがないでしょ。」


千紀「あのな、コンサートはな出てなきゃ、ここにはいないわけ。」


清田「あー、はいはい。行くよ。飛ばすから付いてきてね」


千紀「抜かれないようにな( ・`ω・´)」


が。既にあぜ道を通ってきた私の疲れきった足では自転車のペダルを漕ぐということすら苦痛。

しかも、言い忘れていたが、冬なのである。

長野の冬である。寒いのである。もう氷点下近い。

しかも、ここ安曇野は松本よりもさらに寒い。自転車で風を切る度に手が痛い。

もう悶絶。顔も冷たくて痛いし…。もう私は学生の頃、地球温暖化を本当に望んだ。

どうして、長野は寒いのか。

一年中、暖かければ服だって安上がりで済むのに。とか色々考えていたものである。


寒い登り坂を全力で自転車を漕ぐこと30分弱。

なにやら、やけに明るいところがあるのが確認できた。


どうやら、着いたようである。


「国営アルプスあづみの公園」に。

安曇野公園1
                 (PHOTO BY 千紀)


さ、寒いけど撮りますか。

さやかさんにプレゼントする最高の一枚を撮るために。


終電は、あと2時間後。9時半には駅に居たいところ。

現在、7時半過ぎ。

勝負は1時間半。



12月のクリスマス・イルミネーションに飾られた公園を

青年は、

1時間半という長いようで短い時間のなかで、寒さと闘いながら最高の一枚を撮ることができるのか。




   
               第2章 完





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[ 2011/07/18 13:00 ] 安曇野写真記 | TB(0) | CM(1)

安曇野写真記 第1話 カノン響く夜に。

こんにちは。

3記事連続投稿の第2弾ということで、

久しぶりの写真記をアップさせていただきます。


思えば、写真記として書くのは「乗鞍記事」以来…。

どうしても過去のことを回想しながら書くわけですから、

若干の記憶のズレ、消失等ありますが思い返して書いていきたいと思います。

私は、写真というのはそういった失いかけている思い出を、思い出させる手助けをしてくれる1つのツールだと思っています。

そして今回、写真の力を借りながら思い返しつつ書いていきたいと思う写真記の舞台は…


『国営アルプスあづみの公園』

公園かよ…って思った貴方達には説明が必要ですね。

いや、説明は写真記の中でするとしましょう。


また、なにを撮りに行ったかといえば、


クリスマス・イルミネーション

実に季節外れなのですが、あえてこの時期に持ってきました。

そしてこの写真記なのですが私が高校2年のときのおはなしです。

書く前にそのころの写真を見返したんですが笑っちゃいますね。

いや、まあ技術の面だったり、あの頃何に価値観を置いていたのかとか。

一言で言うならば、若いっていいんです。笑

あと言っときますが笑うところないですからね。今回は。

もうほんとに思い出すのも「…うん。」っていう話だし。でも忘れられない、そんな青春写真記になりました。

まだまだ言いたいことはあるんですが、またあとがきにでも。

それでは…












カノン…

パッヘルベルのカノン。

3つのヴァイオリンパートが2章節遅れて同じ旋律を演奏する。

現代でも、このカノンの影響は根強く残り、

J-POPなどには和音進行つまりは、コード進行は多用されている。

“黄金のコード"の名に相応しい1曲である。






素晴らしい…。

初めて聞いたわけではないが、生でヴァイオリン演奏を聞いたのは今日が初めてである。

今日のコンサートのパンフレットの目次を見るまでこの曲の名前すら知らなかったのだが

「パッヘルベルのカノン」…

なんだろう…

いい音楽というのはなにか体の奥のほうから沸々と湧き上がるものがある。







12月10日。

我が高校の、毎年行われる「クリスマスコンサート」

クリスマスコンサート

私の高校は進学校ながらも行事ごとには力をいれており、

クリスマスコンサートに関しても例外ではなくては他校には見られないほど、会場もホールでやるなどそれなりに力を入れていた。

高校2年である私は来年は受験で来れないだろうなと、今年初めて聴きに来たのだ。

カップルばかりいるんだろうなと覚悟して彼女なしの私は会場入りしたわけだが

ほとんどが演奏する生徒の友達か親、先生といった具合で、カップルは私が見る限りいなかった。

どうやら奴ら、クリスマスの勝ち組は街へ行ったようだ。





そんな淀みのないコンサート会場では圧倒的に女子生徒の比率が高い。

まさに聖地。

どうやら此処へ来たのは正解だった。

女子の隣にさりげなく座って、声をかけて…、ナンパに似た行為すらしようと思ったくらいであるが、

此処へ来た目的が意味を成さなくなる。

そう、音楽に全く興味がない私がクリスマスコンサートに来たのには理由があった。

クリスマスコンサートの主催は音楽部なのだが、

その音楽部は、「合唱班」と「弦楽器班」に別れており、吹奏楽部とはまた違った部活であるのだが私には正直、吹奏楽部との違いがわからなかった。

そしてその音楽部の弦楽器班のヴァイオリンを弾いている一人の女の子に私は思いを寄せていた。

つまりここへ来た理由は1つ。

その子と24日までに良い仲になるために。



さやかさん…。彼女とは1年から同じクラスであった。

惚れたのは9月当たりだったと思う。

合唱コンクールという音楽祭に向けてクラス単位で練習をする際に、音楽部であった彼女が先頭にたって

指揮をしたり、音をとったり。

パートごとに分かれて練習するような機会があったのだが

2つある男子パートの1つの音取をしたのが さやかさんであった。

そのときの一生懸命に鍵盤を叩き、十数人いる男の中で、女の子一人で音をとる彼女にどうやら惚れたのかもしれない。

そしてその時、言うまでもないが適当な理由をつけて彼女とは携帯の番号を交換した。

それからである。

今まではそこそこモテていた私が携帯の前で悩みながらメールを一文字ずつ打ったのは。

さやかさんとは同じクラスといっても正直話す機会もなかったし、まったくと言っていいほど接点がなかった。

同じクラス。ということくらい。

そんなわけで、2年の9月になって初めて話したといった具合である。

つまり、さやかさんに関して私はまったくの情報がなかったのである。

しかし、さやかさんと同じ中学校であった友人に彼女について少し話を聞くことができた。

そしてそこから分かったのは

・頭がいい。(私の10倍)

・おウチはお金持ち。

・中学校じゃ、かなり男にモテていた。

・今は誰とも付き合っていない。

・頭がいい。(私の30倍)

強調して言われたのだが、私より数十倍「頭がいい」らしい。

そしてどうやら私の制球眼は間違っていなかった。

彼女からは男の匂いは感じなかった。正直、特別かわいいといった感じではなくてどちらかと言えば

磨けば光る感じの子だった。ハッキリ言えば容姿はなにか足りない感じの子だった。

しかし、その容姿を彼女の性格が補っていた。

普段はうるさい女友達の横で頷いているような、物静かな子であったのだが、話せば明るいし優しい子だった。

だが、私とは接点がほとんどなかったのである。

合唱の練習の合間に少し話をしたり、休み時間に世間話をしたり。

それも彼女からではなく、勿論私からであるのだが。

当然、メールにしたってそうである。

そして、いつのまにか私の中のネタの弾薬庫がカラになる。

女子高生


いままでの子とはなにか違っていた。

毎回似たような子と恋愛しているのかと言われればそうではないのだが、

手ごたえといったものがないのである。

なにか彼女の中の何かが掴めないのである。

さやかさんのメールに関してもそうである。こっちがどう送ろうとほとんど毎回あっさりした感じで帰ってくる。

しかしどう見ても男慣れはしていないから、恐らく天然。


そして、さやかさんに対して大きく踏み込めず、ただ時間ばかりが過ぎていき、ついに12月を迎えてしまった。

正直9月から3ヶ月も経っているのだが大きな進展はない。

しかし朗報もある。さやかさんの周りに男の影がないこと。

どうやら部活以外で頻繁に話をしたり、メールをするのは私くらいなこと。


そんな12月の朝の1時間目が始まるロッカーの前で彼女と話をしたときのことである。


千紀「おはよう。」


さやかさん「おはよー」


千紀「1時間目なんだっけ?」


さやかさん「うーん>< たしか地理じゃなかったかな」


そんな定石の朝の会話を交わした後にふと、さやかさんの手にしたビラが目に入る。


千紀「ん?それなに?」


さやかさん「あぁ、これね今度のクリスマスコンサートのやつだよ」


千紀「クリスマスコンサート?」


さやかさん「10日にあるんだよ、あっちの会館の方で。」


千紀「へえ。ヴァイオリンやってるんだっけ?」


さやかさん「そうだよ^^」


千紀「暇だし、聴きにいくよ。」


さやかさん「ホントー?たぶん詳しいことは放送で流れると思うから。しっかり聞いてよ。」


千紀「おーけーおーけー」

と、まあこんな感じに私はコンサートへ行くことへなり…

しかし、ただ聴きに行ったのでは次会ったときには「演奏良かったよ」、「あの曲が良かったよ」なんて会話になりかねない。

違う。

そんな会話がしたいんじゃない。

こう、クリスマスっぽい、特別なやつだよ。うん。


なにか練る必要がある。





悩んだよ。

私は苦悩した。

次の会話のネタにコンサートについてと、何か、何か、あとプラスアルファほしいこの気持ち。

それもクリスマスネタなら上出来だよ。


そんなクリスマス直前に焦る寂しい男に天の囁きが。

そして私は、この逆境から抜け出す最高の一手を見つけたのだ。












12月10日 コンサート当日。

時は満ちた。

いや機は熟した。

もはやこの計画があれば確実に、さやかさんを捕まえられるだろう。

あとはタイミングを外さず、そして上手くやるだけ…。


おっと、忘れていた。コイツにも一役買ってもらわなければならない。

トチるなよ、と心のなかで呟き、会場入りし

計画通り、前の方の席に着く。


そして何曲かクリスマスソングの演奏があり、

「パッヘルベルのカノン」の演奏が終わり、冒頭の今に至るのだ。


カノン…正直、曲そのものも素晴らしいのだが、さやかさんが演奏したカノンというのがさらに私の中の何かに火をつけた。

いかん。いかん。

あくまでもこれからは慎重に、しかしかつ大胆に計画通り動かなければならない。

クリスマスツリー

そろそろ時間である。アイツがちゃんと時計を見ていればそろそろのはず…。

アイツというのは、我が写真部の部長である。

写真を語らせたら正直メンドクサイくらいで、カメラの機種、メカニズム、技法、現像について聞いても必ず返ってくるようなカメラ野郎なのだが

クラシックにも多少興味が有るらしく、写真部部長である、清田をコンサートに誘ったのである。

そして清田はそろそろ席を立つはずである。

なぜなら彼は電車通であり、この会場から今から乗ろうとしている電車に間に合わせなければならない。


が、あろうことか清田は演奏中に席を立った。

いくら電車が間に合わないからと言って演奏中に席を立つのはマナーに欠けるだろう。

いや、これはいい。

逆に好都合である。清田は身長が高く、すらっとしたやつで前の席に座らせたのは成功だった。なんせ途中、退出は認められてはいるものの

演奏中に退出しようものならば、観客だけでなく、演奏者の目にも止まるはずである。

清田は私に「千紀くん、先に行くよ」と言い残し、つかつかと会場を後にした。


でかした、と心のなかで彼を褒め、次は私の番である。

あと2曲というのが頃合いだろう。


ふ…ふふふ。


そう。


今回の作戦というのは、こうである。


電車通で、駅までは徒歩である清田をコンサートに誘う。

彼は歩いてい駅まで行かなくてはいけない故に、「あの電車」に間に合うように私よりも先に会場をでる。

私は自転車通であるから彼よりはこの会場に長く居ることができる。

これを利用しない手はなかった。


清田が長身であり、途中退室すれば目立つのは眼に見えていた。それも前の席なら尚更である。

そして清田が出て行った後、それも2曲ほど間隔を開けたあと私も途中退室をする。

勿論、目立ったのは言うまでもない。

正直、演奏中に席を立つのは本当にご法度である。

が、当時、目先の色恋に血走った男子高校生の計画的行動はマナーを破ることすら栄誉に思えるのだ。

もうコレは言葉で言い表せるようなものではないし、今思うとバカである。


だが、この清田の途中退室に対し会場中が嫌悪感を抱く。のは、布石でしかない。

その嫌悪感の中、さらに隣にいた私が途中退室をすれば

会場を敵にまわすことにはなるが、

それよりも重大なミッションを成し遂げることができるから。


さやかさんに「俺、コンサート来たから!!!」っていうアピールをするのにな。




私も正直この会場を退出するタイミングが少しでも遅れると「あの電車」に間に合わない。

「あの電車」とは何か。

今回の作戦の核をなすものの重大なプロセスである。

さやかさんにコンサート来たよアピールを終えた私はそのまま駅まで自転車を飛ばし、

18:30発の電車に乗り、安曇野の駅からさらに『国営アルプスあづみの公園』 ダッシュしなければならない。


なぜか。


来たよ。アピールで彼女はこう思うはずである、「あれ、もう帰っちゃうのかな」

いや思わなくても結構、最悪の場合は「なにあれ?感じ悪いな…」

正直ここは前者であって欲しいのだが、賭けだった。

まあ、どちらにせよ、彼女の気が引ければ良いのである。


後日彼女に会い、話すときには一応、途中退室を詫びながらも

私は

「国営アルプスあづみの公園の

  クリスマスイルミネーションを撮りに行ったんだ」

と口にし、女の子が好きそうなイルミネーションで勝負に出ることにした。


つまり、当時の私の心境はこうである。

クリスマスイルミネーションを撮りに行くという予定がありながらも

さやかさんに女の子ばかりのコンサートに私が来ていることを知らし、私の思いを間接的に伝える。

そしてさらにバッチリ撮ったイルミネーションの写真を彼女にプレゼントすることで…むふふ

なんて考えていたのである。

事実、このあと、この作戦が成功することになる。








話を戻そう。

私はついに清田が出て行った2曲後、予定通り途中退室する。

勿論、演奏中にである。

正直、視線が痛いし、さやかさんの気を引くとはいえ、私の気が引けてしまう。


しかし、ただコンサートに行ってその感想を彼女と話しても恐らく進展はない。

と、私は確信していたのである。

だったらもう1つなにか欲しい。

それが、そこそこ有名な「国営アルプスあづみの公園のクリスマスイルミネーション」の写真を撮りに行くというものだった。


私は最早、周りの目など気にならなかった。

会場は明るくて、顔なんてすぐバレテしまいその会場にいる女の子にはマイナスのイメージしか持たれないが

私の顔を確認してもらいたいのは、さやかさんだけで十分である。

それも既に完了した。なんせ手を軽く振ったら笑ってくれたんだからな。



そして私は途中退室をする。

いや、これは途中退室なんかじゃない。


私が会場を退出したあとも、さやかさんが演奏したカノンは頭の中で流れ続けていたのだから。



私はこれから最高の演奏のお返しに


最高の一枚を撮りに行くのである。




              第1章 完





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追記でおつかれ会やってます。

[ 2011/07/17 13:00 ] 安曇野写真記 | TB(0) | CM(0)








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